脈による診断法と治療


本来鍼灸の診断法には「
望・聞・問・切」の4つの診断法があります。

★望診 患者様の雰囲気、顔色に明るさがあるかどうか、目の輝きがあるか、
呼吸の 調子はどうか、言語動作はよいか、皮膚の光沢はあるか等を診る。
★聞診 声の大小、言語などの音声や咳・喘鳴等の状態、胃内の振水音、
腹中の雷鳴等を聞く。また、嗅覚による兆候(体臭、口臭、膿汁、帯下、大小便)を診る。
★問診 発症から来院時に至る経過、病状、病歴、既往歴、家族の病歴等の一般問診を行い蔵府経絡の変調を診察する。なお、飲食の摂取状況(寒熱・味覚における嗜好)も診断の一助とする。
★切診 脈診、腹診、背診、切経などで直接患者様に触れて診察するものを切診という。特に脈診は他の診察所見に比べて、経絡治療では重要な位置づけがされている。
脈診は四診の中で切診に属し、脈差診脈状診があります。

ここでは、ごく簡略に
脈差診脈状診について書きます。
本来脈診はこの場では書ききれない程、複雑で難解なものですが
ここでは誰にでも取り組み易く分りやすいようにかなり省略して書いてあります。
何分自分もまだまだ未熟な為間違えて書いている所もあるかもしれません。
その点はぜひ御教授お願い致します。


@脈 差 診

(六部定位脈診)

左右の橈骨動脈を3つに分け合計6カ所の脈の差を診て身体の型(証)を決める診断法です。


(肺・大腸)
  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中  
(腎・膀胱)

この図は脈差図と言い、それぞれ「金と火」・「土と木」・「相火と水」の

沈脈(脈を圧していって止まる寸前の部分)

での強弱を診て弱い方に×を付けていきます。

※わかりにくい時は、それぞれ「左右の寸口」・「左右の関上」・「左右の尺中」を

同時に圧して先に止まった方に×を付けます。


また寸口・関上・尺中とは左右の手首の橈骨動脈拍動部での位置の事で、

術者の左右の中指を患者様の左右の橈骨茎状突起の部分に置いた所が関上

それに添えるようにしてすぐ末梢側に人差し指を置いた所が寸口

同様にして関上のすぐ中枢側、薬指を置いた所が尺中になります。

(また脈差図に書いてある右左は患者様の手の右左の事です。)

それぞれの強弱の結果を脈差図に入れ、その配置によって「証」が決定されます。



パターン@このような脈を得られた場合

(肺・大腸)
×  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上 × 
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中 × 
(腎・膀胱)
このパターンで出た場合
まずを比べます。

(寸口)
×  
(関上)
の方が弱い場合
腎虚大腸実証になります。


腎虚大腸実証
の場合は、このパターンになります。

(肺・大腸)
×  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中 × 
(腎・膀胱)



(寸口)
  × 
(関上)

木の方が弱い場合は
肝虚膀胱実証になります。

肝虚膀胱実証
の場合は、このパターンになります。

(肺・大腸)
  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上 ×
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中 × 
(腎・膀胱)



パターンAこのような脈を得られた場合

(肺・大腸)
 × 寸口    火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
 × 関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中 × 
(腎・膀胱)
このパターンで出た場合
土と水を比べます。


(関上)
  ×
尺中
水の方が弱い場合

腎虚大腸実証になります。

(肺・大腸)
×  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中 × 
(腎・膀胱)



(関上)
×   
尺中
土の方が弱い場合は
肺虚胃実証になります。


肺虚胃実証
の場合は、このパターンになります。

(肺・大腸)
×  寸口   火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
×  関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中  
(腎・膀胱)





後同様にして
脾虚小腸実証の場合

(肺・大腸)
  寸口 × 火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
× 関上  
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中  
(腎・膀胱)

心虚胆実証
の場合


(肺・大腸)
  寸口 × 火(君火)
(心・小腸)

(脾・胃)
  関上 × 
(肝・胆)
相火
(心包・三焦)
  尺中  
(腎・膀胱)

但し、この脾虚小腸実証心虚胆実証
整骨や鍼灸の臨床では、ほとんど診ません。
何故ならば、この2つの証は、歩いて来院出来ないほど身体が辛く、
ほとんど入院しているような患者様に出る脈です。

このようにして各個人を5つの型に分け、

@腎虚大腸実証
A肝虚膀胱実証
B肺虚胃実証
C脾虚小腸実証
D心虚胆実証

さて「証」が決定したら次はその結果の利用方法です。

素問」「霊枢」と並んで中国における東洋医学の三大古典医籍である「難経」に
難経69難(相生の関係)
「虚すればその母を診しその母を補い、
実すればその子を診しその子を瀉す」
とあります。

相生の関係とは「助けあう関係」で自然の流れに沿った順調なもの。
木は火を、火は土を、土が金に、金が水に、水は木を生じる関係です。
 


五行図

木 生 火 木は燃えて火になる 木の母は水
火 生 土 火は消えて土になる 火の母は木
土 生 金 土は内部で金をつくる 土の母は火
金 生 水 金は冷えて水滴をつくる 金の母は土
水 生 木 水は木を育てる 水の母は金


(腎・膀胱)

(肝・胆)

(心・小腸)

(肺・大腸)

(脾・胃)
相生の関係図
(矢印の手前がで先がになります。)

 例えば「肝虚証」であれば肝・胆)の母が(腎・膀胱)ですので、
その母である
水(腎・膀胱)のツボにになる治療を施せば良いのです。

従って、この「
」処方は要穴表(クリック)にある
木経中の水穴」「水経中の水穴」に治療を施します。
要穴表から
木経中の水穴は「
曲泉
水経中の水穴は「陰谷
になります。
ここに切皮程度に
補法の鍼を刺入します。

補法

   呼吸 :呼気に刺入し、吸気に抜針する。

   迎随 :鍼を経絡の流注方向に随って刺入する。

   開闔 :経穴の上をよく按じて刺入し、抜針後は直ちに鍼孔を閉じる。

   徐疾 :徐々に刺痛なく刺入し、徐々に抜針する。

   浅深 :浅く刺入し、後に深くする。

   寒熱 :刺入した鍼下の部が熱する。

   揺動 :鍼を刺入して、刺手を震わせて気の循りを促す。

 瀉法

   呼吸 :吸気に刺入し、呼気に抜針する。

   迎随 :鍼を経絡の流注方向に逆って刺入する。

   開闔 :抜針後に鍼孔を開ける。

   徐疾 :疾く刺入し、疾く抜針する。

   浅深 :深く刺入し、後に浅くする。

   寒熱 :刺入した鍼下の部が寒える。

   揺動 :鍼を刺入して、押手を揺るがして気を泄らす。

 
その他、に対して子を瀉す治療や、
変証に対して難経75難の「
相剋の関係」を使う治療等
強い所を弱め、弱い所を補い
病変のある臓腑を周りから助ける事に主眼を置いた治療を行ないます。

治療後、脈差診を再度行ない弱かった脈が強くなったか検証します。
脈差が消失もしくは減少したら五臓の調整治療は終了です。


A脈状診

簡単に書けば脈を形態により分類し、その特徴により、

病位(表裏)、病状(寒熱)、病勢(虚実)を診察する脈診です。
 

七表 浮・実・滑・弦・洪・緊・孔
八裏 沈・遅・渋・濡・微・弱・伏・緩
九道 虚・細・牢・動・促・結・代・長・短
その他 数・大・散・革・疾

また、1、2ヶ月以内に死亡する人の脈を死脈としており、以下のものがあります。

 七死脈雀啄脈・屋漏脈・弾石脈・解索脈・魚翔脈・蝦遊脈・釜沸脈



★脈の深さについて・・軽く指で触れて最初に感じる脈(一番浅い所)から順に
浮→中→沈(脈を圧して止まる寸前の部分)と言います。

まずは脈状診の基本的な六祖脈と言われる脈について書きます。
六祖脈とは「浮・沈・遅・数・虚・実」の6種類の脈の事で

@浮脈 取るとすぐ触れてよくわかり、強く押さえるとわからなくなる脈。
脈を打つ中心が浅い所にある脈。
(中より上)
臓腑の腑で陽・表面
鍼ならば浅く打つ。
A沈脈 浅く取っては分からず、深く取って初めて触れる脈。
脈を打つ中心が深い所にある脈。
(中より下)
臓腑の臓で陰・深部
鍼ならば深く打つ。
B遅脈 遅い脈(健康な術者の一呼吸に三回の脈) 冷え・慢性。灸で暖める
C数脈 早い脈(健康な術者の一呼吸に六回ぐらいの脈拍。) ・急性。鍼が効く
D虚脈 脈は大きく軟らかく、押さえると力がない。
弱々しい脈
(気・血・津液の不足)
治療方法は「補」
E実脈 浮、中、沈すべてを取ってもよく触れ、大きく長く有力な脈。
強い脈
(気・血・津液の過剰または停滞)
治療方法は「瀉」

通常六祖脈重なって現れるもので、例えば浮数虚が現れた場合
病邪は臓腑の中の腑にあり、急性で熱を伴い治療方法は気・血・津液を補うようにする。
鍼であれば入れてすぐには抜かず置いておくようにする。もしくはお灸を施す。

先に書いた(脈差診によってどの臓腑に異常があるかを調べた結果)と
この六祖脈を参考にして治療の場所・身体の状態・治療方針や方法が明確にわかります。


☆あと脈状診で重要な脈を書きます。
五臓六腑の正脈です。
(祖脈と一部重なりますが覚えておくと良いでしょう。)

@浮脈 肺・大腸
(金)
燥邪 皮・毛 前述の通り。
A洪脈 心・小腸
(火)
熱邪 血脈 はじめは盛んで後は弱く、洪水の波が押し寄せるような脈。
B暖脈 脾・胃
(土)
湿邪 肌肉 土用 一呼吸の脈拍が4ぐらいで、ゆったりと落ち着いていて、浮でも沈でもないものは無病
C弦脈 肝・胆
(木)
風邪 力強く、緊張していて弓の弦のような脈。
指先に突っ張った形でキンキン当たるような脈
D沈脈 腎・膀胱
(水)
寒邪 前述の通り。

また五臓の色体表(クリック)等
により身体の状態を推察して診断の手助けとします。

☆脈差診と脈状診でわかった身体の異常の治療法

@腎虚大腸実証の場合 正経治療 奇経治療
A肝虚膀胱実証の場合 正経治療
B肺虚胃実証の場合 正経治療
C脾虚小腸実証の場合 正経治療
D心虚胆実証場合 正経治療

奇経治療については@〜Dまで一覧で書いています。
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